日本の美を世界に

日本は世界に類を見ない変化に富んだ四季と豊かな自然環境が存在します。
日本の自然は時に優しく、特に厳しい。
そんな土地に生きる人々の感性は自ずと研ぎ澄まされ、独自の世界を作り上げてきました。
日常使いの衣類(着物)にも自然の美しさを表現した装飾が多く取り込まれており、
まさに「普遍的な日本の美」を表したものとも言えます。
彩生工藝はそんな日本文化の象徴といえる着物の生地をベースに
現代の生活様式に溶け込む製品を開発しています。
日本の自然が生み出した美の世界を世界に広けて行きたい。
それが彩生工藝の願いです。

知崎 志保 - Chisaki Shiho

愛知県出身。
皇室に献上する椅子などを手掛ける工房で高度な技術を習得。
日本の伝統技術を後世に残す試みとして、使われなくなった着物生地を再利用し、斬新なアイデアで様々な製品を生み出す「彩生工藝」を立ち上げる。

ブランドストーリー

私は愛知県常滑市の職人の家に生まれ育ちました。

祖父は盆栽鉢の型職人、両親は人造大理石の工場を営んでいました。幼い頃から職人の技に囲まれて育った私は、モノを作ることに対して深い感謝の念を抱くようになりました。特に裁縫が好きだった母の影響で布に強い興味を持ち、布を使って何か意味のあるものを作りたいと夢見るようになったのです。

私の人生の転機となったのは、昭和天皇のソファを手掛けた歴史ある工場で働き始めたことでした。皇室御用達の家具を製造するこの工場では、非常に高度な職人技が要求され、その環境で私は職人として大きく成長しました。

しかし、そこで使用されるソファの生地のほとんどが輸入品であることを知り、大きな衝撃を受けました。なぜ日本の伝統的な着物生地が使われていないのだろう、と疑問を抱いたのです。

その背景には、着物職人の減少や日常生活における着物の存在感が薄れている現状があります。私は以前から、こうした状況に心を痛めていました。着物は日本文化の象徴であり、その消滅は私たちのアイデンティティの一部を失うことを意味します。この信念を胸に、私は着物地をインテリアデザインに取り入れ、鮮やかでエレガントな作品を通じてその美しさを世界に発信することを使命とするようになりました。

着物地は、蚕からの贈り物である絹を用い、織りや染めにおける職人の卓越した技術が詰め込まれた素材です。しかし、その繊細さやお手入れの難しさから、普段使いに適していないと感じる人が多いのも事実です。それでも私は、着物の美しさと伝統を現代の暮らしの中に取り戻したいと強く願っています。着物地をインテリアに生まれ変わらせることで、その優雅さが人々の生活を豊かにし、世界中の人々に喜びをもたらすと信じているのです。

私の作品では、デッドストックの着物生地を使用しています。それぞれの生地には独自の物語が宿り、多彩な柄や質感、特徴を持っています。私のクリエイティブなプロセスは、それぞれの生地の魅力を最大限に引き出す方法を見つけ出すことにあります。その結果、すべてが一点ものの作品として完成するのです。同じ生地を複製することはできないため、私の作品は「一期一会」の精神を体現しています。完成した作品は、私にとって愛情を注いだ特別な存在です。

保護された猫や犬に新しい家を見つけるように、私はデッドストックの着物生地に新たな命を吹き込み、インテリアとして生まれ変わらせることで、新しい「家族」と結びつけています。

私の使命は、これらの生地が長年愛され、大切にされる場所を見つけることです。そのため、一つひとつの作品を細心の注意と献身をもって作り上げています。そして、その布地が飾る空間に喜びと温もりをもたらすことを心から願っています。